バイオリンの魂柱の役割や注意点をご案内します。

魂柱とは

 魂柱(こんちゅう)は、円柱状の小さなパーツで、ボディ内の表板と裏板の間に立っています。
 魂柱という名称からも重要なパーツであることを想像いただけますが、弦から駒、駒から表板に伝わる振動、すなわち音エネルギーを、裏板へ効果的に伝える重要な役割を持ちます。
 バイオリンの神経系統とでも言うべきもので、適切に作られて適切な位置に置かれるかどうかで、音色は大きく変化します。
 材質はスプルースで、表板と同じく木目の間隔が狭い方が良質とされています。

魂柱 魂柱は、駒の右足付近に立っており、右f字孔から覗き込むと確認することができます。
 更によく見ると、その魂柱の表面には、小さな穴があいているのを確認できますが、それはバイオリン内部に魂柱を立てるために、「魂柱立て」という道具を突き刺した痕でして、どのバイオリンにもあります。
 傷などの不良ではありませんのでご安心ください。

魂柱の注意点

 さて、魂柱は実は接着されているわけではないのです。
 表板と裏板の間に挟まっているだけで、弦の張力による駒の圧力によってしっかり固定されています。
 そのため弦の交換時には、魂柱が倒れないよう注意が必要です(「弦について」参照)が、もしも倒れてしまった場合には当店をはじめ専門店に直してもらいましょう。
 また輸送時には、弦の張力が強すぎると魂柱がボディを突き破ったり、逆に弦の張力が弱すぎると魂柱が倒れたりする恐れもありますので注意が必要です(「運搬する場合」参照)。

魂柱の調整について

魂柱の調整  なにより、この魂柱の位置は、音質にも大きく影響します。
 その正しい位置は様々な説がありますが、少なくとも言えることは、楽器が違えば、魂柱の最適な位置も違います。
 楽器の材質、性格、ボディ内部の力木、駒などなど、あらゆる様々な要素をもとに、低音から高音までの響き方を確かめた上で、最適な位置を探し出すといった、熟練した高度な技術が要ります。
 魂柱の位置が変われば、表板と裏板との間隔の差により適した魂柱の長さも変わり、魂柱の断面も変わり・・・、地味ながらもとても繊細でとても根気の要る、まさに楽器に「魂」を宿すための作業と言えるかもしれませんね。
 更に、演奏者の音色に対する好みによっても、魂柱の適した位置は異なります。
 バイオリンをメーカーから入荷したときには、この魂柱が明らかにおかしな位置に立っていたり、明らかに魂柱の断面が表板や裏板にぴったり合っていなかったりすることがほとんどですが、残念ながら魂柱を調整せずに(できず)、そのままの状態で販売する楽器店も少なくありません。
 楽器自体が持っている性能を十分に発揮するために、魂柱の調整はたいへん重要な調整作業の一つです。
 当店では一部機種を除き良好な状態に調整してから発送していますのでご安心下さい(「調整について」参照)。

バイオリンパレット 初心者コラム