チューニングアジャスターは、チューニング(調弦)作業の補助として、音程の微調節ができるネジ状のパーツで、テールピースに装着されます。
単に「アジャスター」と呼ばれることが多く、また、「E線器」とも呼ばれ、本来はE線(1弦)のみに装着するものです。細くてデリケートなE線は、糸巻き(ペグ)だけでは音程の微調節が困難なためです。
または、本来はADG線には必要ないのですが、すべての弦にアジャスターが付いたテールピース一体型のものもあり、低価格帯の商品に多く見られます。
特に微調節の難しいE線(1弦)には、このアジャスターを使うと便利です。
アジャスターのネジを右に回せば音程が高くなり、左に回せば音程が低くなります。
ただし、アジャスターはあくまでも補助的に微調節として使うものですので、できるだけ糸巻き側でチューニングしてください。
アジャスターのみで大きくチューニングすると、各弦の張力バランスの違いにより駒を傷めたり、万が一駒が倒れた際に突き出したアジャスターの先で表板を傷つけたりする恐れがありますので、アジャスターの先が大きく飛び出していないか確認するよう、チューニング後には必ずチェックする習慣をつけておくと安心です。
もし、左の写真のように、アジャスターの先が大きく飛び出している場合はたいへん危険な状態です。
アジャスターを十分に緩めて、再度チューニングください。
必ず、ある程度までは糸巻き側でチューニングし、必要であれば最後にアジャスターを少しだけ使うようにしましょう。
アジャスターは消耗品です。
バイオリンの弦にはそれぞれ数キロもの強い張力が常に掛かっており、小さな部品であるアジャスターの一点が、その大きな力を支えることになります。
そして、チューニング作業によりネジ山が磨り減っていくのです。
もしもアジャスターをグルグル回してチューニングしていると、新品であってもすぐに壊れてしまうこともあるでしょう。
重ねて強く申し上げますが、できるだけ糸巻き側でチューニングして、どうしても音程がわずかに合わない場合にのみ、その微調節のためにアジャスターを少しだけ回す程度に使いましょう。
製作精度が劣る中国製のアジャスターでは、操作性も耐久性も劣りますが、低価格帯のバイオリンの多くに始めから装着されています。
ネジの動きが悪くなったら交換しましょう。
アジャスターはご自身で簡単に交換できますのでご安心ください。
交換方法は、まず弦を一旦外し、固定されているネジを外しますが、うっかり楽器に傷を付けてしまわないよう、交換作業時には、テールピースの下部にクロスやハンカチなどを敷くなど、十分にご注意ください。
そして、もしラジオペンチなどの工具を使用される際には、取り付けネジをきつく締めすぎてテールピースを割ってしまわないようご注意ください。
取り付けネジは軽く締め付けるだけで大丈夫です。
アジャスター一体式のテールピースについては、アジャスターが壊れた場合、テールピースごと交換しなければ直らないといったリスクがあります。
このことは、便利なアジャスター一体式のテールピースにおける最大の欠点と言えるでしょう。
それでもすぐにあきらめないでください。
ネジ山の相性により、アジャスターネジの場所を入れ替えるだけで改善されることもありますので、1ヶ所の動きが悪くなったら、テールピースごとすぐに交換せず、アジャスターネジの入れ替えをお試しいただくのもよろしいかと思います。
どうしても直らない場合には、残念ながらテールピースの交換が必要です。
当店では様々なタイプのチューニングアジャスターを販売していますが、すべてとも、古くから定評があり、操作性と耐久性に優れた、ウィットナー社をはじめドイツ製のアジャスターを販売しています。
まずこちらがお値打ちでスタンダードな、ボールエンド用L字型アジャスターになります。
「アジャスター ニッケルメッキ」「アジャスター ブラックメッキ」「アジャスター ブラックメッキ金ネジ」「アジャスター フルゴールド」の4種類があり、カラーデザインのお好みでお選びいただけます。
少しお値段は張りますが、おすすめのチタンアジャスターも用意できます。
チタンアジャスターは、軽くて硬いチタン(チタニウム)製で、通常のアジャスターが重量5〜6gであるのに対し、このチタンアジャスターはなんと約2.5gとたいへん軽く、チタニウム金属の性質上、音にミュートがかかりにくく、音の伸びや音の抜けが良くなります。
中級以上の方にもぜひお試しいただきたい、たいへん優れたチューニングアジャスターです。
なお、アジャスターは本来E線用ですが、A・D・G線に装着できる「幅広溝」タイプのアジャスターもあります。
←こちらの写真で、左側のものが通常のアジャスター、右側のものが幅広溝アジャスターになります。
幅広溝タイプのアジャスターは、元々は太いガット弦専用に作られたアジャスターで、弦を入れる溝が広くて深い形状となっています。そのため、ガット弦に限らず、A・D・G線への装着にも適しているのです。
すべての弦にアジャスターを装着している有名奏者もいますが、本来はE線に使用するパーツです。他の弦にも付けると便利ではありますが、当店では糸巻きの調整を行いますので、他の弦については必要ないかと考えます。
それでも便利なことに間違いありません。ご希望でしたら、合わせてご注文いただいたチューニングアジャスターを取り付けての発送もお受けいたしますので、遠慮なくご用命ください。
特に子供用分数サイズのバイオリンでは、小さい楽器ほどチューニングの微調整が困難ですので、すべての弦のアジャスター装着がより有効です。
子供用分数サイズのバイオリンにおすすめのアジャスターを紹介します。
←こちらの分数専用アジャスターは、弦を外さなくても、駒とテールピースの間に取り付けることができます。小型で軽く、おすすめのアジャスターです。
ただしネジを深く差し過ぎると弦を傷めやすいのでご注意ください。
続きまして、ループエンド専用のヒル型アジャスターをご案内します。
「ヒル型アジャスター ニッケルメッキ」「ヒル型アジャスター ブラックメッキ」「ヒル型アジャスター ブラックメッキ金ネジ」「ヒル型アジャスター フルゴールド」の4種類があり、カラーデザインのお好みでお選びいただけます。
ヒル型アジャスターのフック部分に E線ループエンドタイプ弦の先の「輪っか」を引っ掛けて使用します(ボールエンドタイプの弦には使用できません)。
ヒル型アジャスターの大きな長所といたしまして、外観上のすっきりさだけでなく、弦の張力を正しく確保でき、高音域の鳴りや響きにも有効と言われます。
その点、L字型アジャスターでは、左の写真に示すように、正規の弦長よりも短くなってしまい、設計上における弦の振動特性を最大限に発揮できないのではといった理屈です。
その大きな利点により、ヒル型アジャスターは主に中〜上級者にも好まれ人気があります。
ただし一方で、ヒル型アジャスターの大きな短所も申し上げなくてはなりません。ループエンド弦の輪っか部分が、たいへん切れやすいことが宿命なのです。新しい弦に張り替えたとたんに、すぐ切れてしまうなんてこともよくあり、ショックですよね・・・。
そこで登場するのが、「ストリングプロテクター」です。
ストリングプロテクターはゴム製で、ループ弦の輪っかをやさしく保護し、切れてしまうことを抑止します。
他にもいくつかの各種アジャスターを取り扱っていますので、ぜひお好みのアジャスターを探してみてください。
アジャスターのつまみ部分に、美しい天然石が組み込まれたアジャスターネジもありますよ。
おしゃれなワンポイントとしてバイオリンをかっこよく飾ってみませんか。パワーストーンとしての効果も期待できます。