駒(ブリッジとも呼ばれます)は、バイオリンの4本の弦を所定の位置に支え、弦の振動、すなわち音エネルギーを効果的に表板へ伝えるとても重要な部品です。
材質は裏板や側板と同じく、楓材で作られています。
駒自体のデザインも美しく、高級駒では有効に音を伝達できるよう密度が高く、木の繊維も規則正しく詰まっています。
様々なグレードの各種駒がありますが、取り付けには専門的な加工が必要となりますのでご注意ください。
高額なバイオリンでも、入荷してそのままの初期状態では、駒の足の面が表板の形状に合っていません。
合っていないと駒が傾きやすく、また音エネルギーを表板へ有効に伝達できませんので、その楽器の表板の状態に合わせて、駒足の面形状を合わせる調整作業が必要です。
それだけでなく、駒の厚み、高さ、上部丸み形状、弦溝の間隔や深さなどなど、駒の調整について重要な項目は非常にたくさんあります。
残念ながら駒を調整せずに販売する楽器店も少なくありません。
駒を正しい位置と角度で立てた際に、駒足の面が表板にピッタリと合うかチェックし、もし合わないようでしたらすぐにでも調整に出しましょう。
また、初期状態では駒の高さにより、弦高が高すぎたり場合によっては低すぎることもありえます。
更に駒の厚さもにも注意が必要です。
弦高が低すぎると音が硬くなり、高すぎると演奏が困難で、駒が薄すぎると音が弱く、厚すぎると音が鈍くなる傾向があります。
これは演奏者個人の好みにもよりますので、正しい弦高の基準値はありませんが、駒の調整が有効です。
新品の場合は、後々好みで弦高を低く調整しやすいよう、若干高めに調整されるのが一般的です(低い状態から高くするには駒を交換しなければいけなくなるからです)。
このように、楽器を演奏しやすくするために、また楽器自体が持っている性能を十分に発揮するために、駒の調整はたいへん重要な調整作業の一つです。
なお一部機種を除き、当店ではもちろん調整を行ってから発送しておりますのでご安心下さい(駒は立てた状態でお届けします)。
詳しくは「調整について」をご覧下さい。
駒を正しい位置、正しい角度で立てることは、良い音を出すために重要なことです。
駒を立てる位置は、基本的に次の通りです。
左右位置はもちろん中心に来るようにします。
上下位置は、左側のf字孔内側刻みの位置に合わせます。
次に立てる角度ですが、バイオリンを横から見て、駒のテールピース側の面が、表板面に対して垂直になるように立てます。
楽器がきちんと調整されていれば、その状態で駒足がぴったりと表板に接するはずです。
これらのような状態になっているかどうか、時々チェックする習慣を必ずつけてください。
高額バイオリンにおいては、柔らかい良質なニスの特性上、駒を立てた跡がその位置に付いていることもありますので、その位置を参考にするのもいいでしょう。
駒は本体に接着されているわけではありません。
チューニング時、弦の張り替え時、持ち運びの際、輸送の際などで、弦の張力によって駒の状態がおかしくなることがよくあります。
次のことを毎回必ず常にチェックしましょう。
・駒が滑って、足の位置が上下左右にずれていませんか?
・楽器を横から見て、駒の角度が糸巻き方向に傾いていませんか?
・楽器を横から見て、駒の上端が糸巻き方向に反っていませんか?
・楽器を上から見て、駒の上端にねじれがありませんか?(アジャスターを使いすぎると起こり得ます)
もしそのまま使用を続けると、音が悪くなるだけでなく、駒が変形してしまったり、駒が倒れてボディに傷が付いたり、そのはずみで魂柱も倒れてしまう可能性もありますし、ボディや駒自体が割れてしまう可能性だってあります。更には、ニスに駒足の跡がおかしな所に付いてしまうこともあります。
駒を横から見たり真上から見たりして、チューニング時には必ず駒の状態をチェックし、もしも傾いていたり、位置がずれていたり、反っていたり、ねじれている場合には、すぐに次のように修正しましょう。
安全に作業できるよう、椅子に座ってバイオリンを膝の上に置きます。
万が一、駒が倒れてテールピースでボディに傷を付けないよう、テールピースの下部にクロスやハンカチなどを入れておくのが望ましいです。
傾き・反り・ねじれを直す場合、駒上部を両手の親指と人差し指ではさみ、慎重に傾き・反り・ねじれを修正します。
位置も直す場合は、駒を動かせるよう弦をある程度まで緩め、駒中央部を両手の親指と人差し指ではさみ、慎重に位置を修正して、弦をチューニングし直します(チューニング後には改めて駒の状態もチェックしましょう)。
弦を張り替える際は、ついでにおすすめしたいのですが、弦が通る駒の溝を濃い鉛筆でなぞると良いでしょう。
これは、弦のすべりを良くするための作業で、弦が切れにくくなるとともに、弦の張力により駒が傾きにくくもなりますよ。
更に言いますと、上駒(ナット)の溝に鉛筆をなぞると、やはり弦の耐久性に有効です。
もしも駒が倒れた場合は、自分で立ててはダメで専門店でなければ立てることができない・・・というわけではありません。
内部の魂柱が倒れたり位置がずれていなければ、上記要領で自分で正しく立てることができます。
ただし、駒が長期間外れた状態になっていたなどの場合には、当店をはじめ専門店で見てもらうことをおすすめします。
また、万が一駒が倒れた衝撃で、テールピース下部に傷が付き、その傷が木材に深く達しているようでしたら、そこから割れてくる恐れもありますので、当店をはじめ専門店で見てもらいましょう。
当店ではもちろん再調整も修理もお受けしていますのでご安心ください(アフターサービス)。