バイオリンの調整内容について詳しくご案内します。

調整 バイオリン、ビオラ、チェロなどの弦楽器は、たとえ有名メーカーでも、たとえ高額なものでも、入荷時には調整が必要で、そのままでは正常に(有効に)お使いいただけない状態です。
 (サイレントバイオリンなどのエレキバイオリンについても同じことが言えますが「エレキバイオリンの調整」に補足しますのでご覧ください)

ご注意ください 残念ながら、楽器の調整作業を行わず(できず)に、入荷時のままの状態で売られていることがたいへん多いのが実状ですので、注意が必要です。
 調整がされていないバイオリンは、様々な「障害」が起きている状態です。
その一部をご案内しますと・・・。
(以下の写真は実際に入荷したままの商品を撮影したものです)

●弦の巻き方が不適切なために、弦が切れやすく、またチューニングしづらい。
弦の巻き方が不適切
←写真右側糸巻きのG線(4弦)が正しい巻き方ですが、左側糸巻きのE線(1弦)は弦が重なってしまっています。
 これではチューニングのために少し糸巻きを回しただけで、すぐ簡単に切れてしまう恐れがあります。

●糸巻きのテーパーが不適切なため、糸巻きが止まりにくい。
糸巻きの調整
←ペグボックスにあけられている穴のテーパーを正しく調整しているところです。もちろん糸巻き自体も調整する必要があります。
 正しくチューニングいただくために、とても重要な作業です。

●駒の足がボディ形状と合っていないため、まっすぐ立てることができず、音エネルギーを有効に伝達できない。
駒足の隙間
←写真が分かりにくくて申し訳ありませんが、駒足両側ともボディとの間に隙間がたくさんあります。
 そのため、弦から駒に伝わった音エネルギーを共鳴するボディへ有効に伝達できず、バイオリン本来の性能を発揮できません。
駒の足が合っていない  駒足の面だけでなく、正常にお取扱いいただくには、駒の位置や角度も重要です。
 しかし、
←駒の足をボディに合わせて立てると、前側(糸巻き側)に傾いてしまう。
 この状態では、駒を倒してしまう可能性も高くなります。
駒の足が合っていない
←これを無理矢理に正しい状態(駒のテールピース側をボディに対して垂直)にしても、駒足とボディの間に隙間ができてしまいます。
 こうしたところで、やはり音が有効に響かず、弦の張力によりすぐまた前側に傾いていくでしょう。

●駒が厚すぎるために、音エネルギーを有効に伝達できない。
 厚みが薄過ぎても問題ですが、入荷時の初期状態では厚すぎることが多く、良い音が有効に響くように、楽器一つ一つそれぞれの性格を考慮しながら適切な厚さに調整する必要があります。

●弦高が極端に高すぎるために、押さえる指がすぐに痛くなる。
弦高が高い
←駒の高さが極端に高いため、弦と指板の間が大きすぎる。
 左手の指で弦を押さえるのが大変で、上達に支障をきたします。また、演奏が困難なだけでなく、音程も合わせにくくなります。

●弦間が不均一なために、演奏しづらい。
弦間が不均一
←A線(2弦)とD線(3弦)の間が狭く、D線(3弦)とG線(4弦)の間が大きい。
 間隔が狭いところでは、弦を押さえる左手の指が隣の弦に接触しやすくなってしまいます。

●弦が駒に食い込んでいて雑音の原因になり、また弦も切れやすい。
弦が駒に食い込んでいる
←E線(1弦)とA線(2弦)が駒に大きく食い込んでいる。
 ここまで食い込むと明らかに音色に悪影響があり、チューニング時に弦が簡単に切れてしまうこともあります。
 初期状態によっては、逆に溝が浅すぎることもあり、その場合には弦の位置が特定できません。

●魂柱の位置が不適切なために、音が有効に響かない。
魂柱の位置が不適切
←写真が分かりにくいのですが、魂柱が駒足のほぼ真下に位置している。面が合っていないこともほとんどです。
 これでは音が有効に響きません。魂柱の調整はたいへん重要な作業で、楽器一つ一つそれぞれの性格を考慮しながら適切に調整する必要があります。

●あご当ての位置が不適切なためテールピースに接触し、音が有効に響かない。
あご当てとテールピースが接触
←あご当てが右方向に寄りすぎているため、テールピースに接触している。
 これでは音の響きを止めてしまい、雑音の原因にもなります。初期状態によっては、あご当ての一部を削り取る調整が必要なことも少なくありません。

 などなど、他にもたくさんのチェック項目がありますが、このように入荷時の楽器は、演奏が困難であったり、なにより楽器自体が持っている性能を十分に発揮できていません
 それでも演奏できないことはありませんので、特に初心者はそれに気付かないことも多いでしょう。
 たとえかなりお値打ちに購入できたとしても、販売店で調整がなされていないバイオリンはおすすめできません。
 バイオリンの調整には、多数の特殊な工具類が必要なだけでなく、なにより、かなり熟練した専門的技術が必要です。

 お客様からご相談をいただくことがあまりにも多いので、不本意ながらあえて書かせていただきますと・・・、
 最近では、調律済みとアピールする楽器店もありますが、「調律(チューニング)」と「調整」はまったく異なりますのでご注意ください
 また、例えば糸巻きにコンポジション(ペグソープ)を塗るのみなど、ごまかし程度の内容だけで調整済みですとアピールする楽器店も残念ながらかなり増えてきましたので十分にご注意ください
 楽器店全体のモラルが向上することを切に願う次第です。

調整します 当店では、入荷した楽器をそのまま販売いたしません。
 たしかに、特に低価格帯の商品ではその品質の特性上、また調整にかかる人件費や技術料などを考慮した場合、調整の範囲には限界もあります。
 すべて完璧に細部まで調整した場合は、販売価格が定価を大幅に越えてしまうのです。
 実際に、安売店とは逆に、独自の調整を行って定価を大幅に超える価格で販売されている楽器店、更には、ラベルを貼り替えて別の楽器として販売される楽器店もあります。
 それはそれで、技術レベルに見合った販売価格であれば問題があるとは思っていませんし、調整が必要なことをお客様へ言わずにそのまま販売しているお店よりも、むしろずっと良心的と考えています。
 しかし当店では、できるだけ低価格に、できるだけ良好な状態で販売したいと考えております。

 そこで当店では、もともと付いているパーツも生かし、お使いいただく上で最低限の調整はもちろん、お値打ちに販売できる範囲内で、1台1台しっかりと時間をかけて良好な状態になるよう、調整を行ってから発送しておりますのでご安心下さい。
調整作業スナップ1調整作業スナップ2
 なお、調整代は販売価格に含まれており、別途頂戴いたしませんのでご安心ください。
 調整代について、相場は条件によって大きく異なりますが、低価格な場合で考えても、例えば駒調整だけで3千円、糸巻き4本だけで4千円・・・などなどといったところでしょう。
 手前味噌で恐縮ですが、これだけでも当店ではどれほど販売価格をお値打ちに設定させていただいているか、お分かりいただけると思います。

 話が長くなっていまいますが、「お値打ちに販売できる範囲内」の調整内容について、一つの例をあげてご説明します。
 例えば、不適切な糸巻きのテーパーを調整する場合、穴側と糸巻き側をそれぞれ正しく削り取ります。
 ただ、特に低価格なものほど、初期状態は狂いが大きい傾向にあります。
 その場合本来は、一旦ペグボックスの木を埋めてがら、穴をあけ直さなくてはなりません。
 しかしそこまでするには調整コストが跳ね上がってしまい、お値打ちに販売することができません。
 そのため、基本的には削り取ることで調整しますが、削る量が多くなり、糸巻きの先端がペグボックスから少し突き出た状態になることもありますが、それでも正常にお使いいただけますのでご安心ください。

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