●ニスの種類
バイオリンの表面に塗るニスには、大きく分けて「アルコールニス」と「オイルニス」があります。
両者の違いは、樹脂をアルコールで溶かすか、それともテレピン油で溶かすかの違いで、どちらが優れているというものではありません。
アルコールニスは塗る作業が困難、オイルニスは乾きにくいなどの、製造過程での特徴はありますが、楽器の選択のためにどちらかこだわらなくてもよろしいかと思います。
それよりも、ニスに艶があり、透明色があるようなものが好まれます。
色合いも、赤っぽいもの、茶色っぽいもの、オレンジ色っぽいもの、黄色いものなど様々ですが、好みによりますね。
良質なバイオリンでは、ニスを手作業にて丁寧に何度も何度も、最低でも1ヶ月以上かけ塗りこんで仕上げます。
ニスを1層塗ったら1週間以上乾かし、それを15層ほど重ねて塗るといった気の遠くなるような作業も聞いたことがあります。
やはりこれも価格に影響する大きな理由の一つです。
低価格帯の商品(SV-130、SV-180、RV-250、VS-1)では、コストのかかるニス塗り仕上げではなく、ラッカーやポリウレタンなどポリ系塗料のスプレー仕上げになっています。
それらはニス塗りと比べ、音響効果も劣り、塗装が剥げやすいのでご了承ください。
また、長期間使用するうちに表面がひび割れてくることもありますがおそらくその頃には演奏技術も上達して、バイオリン自体を品質性能の高いものに買い替えていることでしょう。
●ニスの役割
ニスの役割は、第一に楽器の保護効果です。
汗などの水分や、汚れなどが木材にしみ込まないよう保護しています。
また薄いニス層ながら、木材の強度を増しています。
外部からのちょっとした衝撃からも木材を保護しています。
ニス自体の性質も重要で、柔らかで軽く、つまり木の膨張圧縮変化に従って楽器をきちんと包み込まなければなりません。
第二に音響効果があげられます。
ニスを塗らないバイオリンは非常に高い周波数帯の音を出しやすく、ある意味で耳障りな音になってしまいます。
しかしニスにより木材が硬化し、この耳障りな音を取り除く効果があり、低音から高音まで美しく響くようになります。
●ニスの不具合
裏板などにケースの跡が点々と付いてしまうことがよくあります。
また、肩当を装着する部分はもちろん、手でよく触れる部分などが剥げやすいです。
バイオリンのニスは、家具などに塗られるニスとは性質がまったく異なり、音響効果に優れた柔らかいニスが塗られているためです。
高級楽器に塗られる柔らかい良質なニスの性質上、これは仕方がない問題でもあり、あまり神経質にならない方がよろしいかと思います。
むしろニスの外観上の風格や貫禄が出たとお考えいただくのがよいでしょう。
ただ気を付けていただきたいのは、木材の地が出るまで放っておくと、汗や汚れが染み込んでしまいます。
そうなる前にニスの補修を行って下さい。
その他、硬いニスの場合、楽器を高温下に置いていた場合、クリーナーとの相性が悪い場合などに、ニスが剥がれたりヒビが入ったりすることがあります。
さて、前述しましたように、特に高額商品に塗られる柔らかい良質なニスの性質上、ボディ表面にケースの跡が付いてしまうことがありますが、これを避けるためには、楽器を吊るしておくことも一つの方法です。
ニスが安定するまでは、例えば針金ハンガーを曲げて、渦巻きの部分に引っ掛けて室内に吊るして保管されると良いでしょう。
ただし、決して落としたり何かをぶつけたりしないよう、温湿度の急激な変化に気をつけること、また直射日光や水分はもちろん、タバコのヤニやホコリの付着などにも十分に気を遣いましょう。
●ネックの裏側
ネックの裏側は、質の異なるニスが塗られています。
またはなにも塗られていないものもあります。
この部分は演奏時に左手親指で擦られるため、きれいなニスを塗ってもボロボロに剥げてしまうのです。
また、親指が滑らないようにするためでもあります。
長期間使用されると、どうしてもニスが剥げてきたり、なにも塗られていない場合は木材が黒ずんできます。
●f字孔の側面、ペグボックスの内面
f字孔の側面とペグボックスの内面には、濃い色をしたニス、または黒く塗られている場合が多いです。
この部分はニスをきれいに塗るのが非常に難しいからなのです。
きれいなニスを塗っても、どうしてもムラになりやすいので、暗い別の色で仕上げられます。
結果、美観上のアクセントにもなっています。
低価格なものでは、やはり黒く塗られていたり、決してきれいとは言えない雑な仕上げになっていることが多く、またボディの内部にニスが垂れてしまっていることも珍しくありません。
高額なものでは、音質には無関係なものの、このような部分もきれいに仕上げられている傾向にあります。