バイオリンのボディの加工方法やその特徴についてご案内します。

加工方法

加工について 表板、裏板とも、低価格なものでは「合板」であったり、「プレス工法」で作られるバイオリンがあります。
 プレス工法とは、薄い平らな板に熱を与え、変形させて無理矢理盛り上がらせる方法です。
 むくの分厚い単板から削り出す方法に比べれば、はるかに少ない材料で済みますので、材料コストはとても安くできます。
 しかし合板やプレス材では、板の繊維・密度・強度が部分的に変化して良い音の響きは得られにくく、また長期間使用する間に盛り上がりが戻ることにより破損や変形の原因にもなることがあります。
 高額モデルでも、それらの問題が起きないようにある程度までの「半プレス工法」で作られるものもありますが、完全な「プレス工法」のものはあまりおすすめできません。
 低価格帯のものから選択するときは、「単板」で「削り出し」であるかについて確認することをおすすめします。
 ただし、「半プレス工法」で作られた有名メーカーのバイオリンでも、「削り出し」と謳われることもあるのが実状となっていますので注意が必要です。

 ちなみにご参考ですが、1台のバイオリンを作り出すには、はじめの樹木から約90%が削り捨てられてしまいます。
 それだけ製作の手間がかかり、とても贅沢な楽器なんです。
材料加工1加工2加工3

 音響効果の優れた木材を選ぶことも重要ですが、その木材を適切に木取りし、適切な厚みに分布されるよう、削り出すという作業自体にも、高級バイオリンにはかなりの手間がかかっています。
 表板の厚さはすべて均一ではないのです。
 大まかには、中央付近で厚く、周辺に向かって薄くなっていき、縁でまた急激に厚くなります。
 これによって良い振動が得られるわけですが、実際にはそれぞれ異なる木の性格に合わせて、厚みの分布を定めるハイレベルな技術が必要になります。
 よく響くよう、基本的にはできるだけ薄く削っていきますが、削りすぎた場合には弱々しく迫力の無い音になり、破損の原因にもなります。
 厚すぎる場合も鈍く冴えない音になり、やはりいつまでたっても良い響きになりません。
 木材が良質で、適度な厚さの場合は、弾いていくうちに輝くような音色になります。
 このように使用する木材の部分的な性質さえも考慮しながら、理想的響板としての部分的な厚さを、細心の注意を払いながら削っていくわけです。
 その結果、良い技術で手間暇かけて作られたものは、良い音が響きます

 また、十分に乾燥作業が行われていることも重要です。
 高額なものでは、30年以上自然乾燥されているものも珍しくはありません。
 それを考えれば、その間の保管料だけでも高額になってしまうのがよく分かりますよね。

 更に、丁寧に作り上げられたものは外形の精度も高く、曲面、曲線の隅々まで精巧にビシッと作られている印象を受けます。
 その点、こちらのバイオリンValente Germanyシリーズでは、掲載写真からもまさにビシッとした作りがお分かりいただけると思います。

接着方法

 上記のとおり繊細に成形された材料は、小さな木箱のように貼り合わせ組み立てられます。
 貼り合わせ接着方法は、強力な木工用ボンドなどの接着剤が使われるわけではなく、ニカワが使われます。
 あえて接着強度の弱いニカワが使われることには、音響効果に優れるといった大きな利点以外にも、重要な理由があります。
 木材は外気の温度や湿度の影響を受けて膨張と収縮を繰り返しますが、その木材の変化に対応できる柔らかな性質の接着であり、木材の割れなどを予防する効果があります。
 また、将来的な修理が可能となるよう、水を含むと簡単に剥がれてくるニカワをあえて採用しているのです。
 結果どうしても、剥がれが起きやすい楽器とも言えますが、ニカワ接着はバイオリンの重要な特徴の一つと言えるでしょう。

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